「証券アナリスト」というと、「儲けた・損した」というイメージを持つ人が多いと思います。このように、「企業を分析して利益を稼ぐこと」は、証券アナリストの重要な仕事の一つではあります。しかし、それと同じぐらい、それ以上に、大切な社会的役割があります。
それが、「情報の非対称を解消すること」です。
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資本市場における証券アナリストの役割
投資家の意思決定の助けとなるのが証券アナリストです。
アナリストは、「株式の本来価値を算定することを職務」とする専門家です。
アナリストの重要な社会的機能の一つとして、「情報の非対称の是正」が挙げられます。
証券の定義
証券は、そのものには価値がないが、何らかの権利を表象するもの。
債券などの支払約束手段の価値は、債権者の財務状況によって異なる。
株式の価値は、その株式にどれだけお金を出しても良いかという人々の判断によって決められる。
レイトナーとリーハーゼンの定義
すなわち、
証券の価値は、市場参加者によって価格が形成されることにより、日々刻々「創造」されます。
その価値を評価するか、判断するのは、当該株式の購入者(投資家)です。
情報の非対称の是正
企業が圧倒的に情報優位
- 株式の発行体で資金を受け取る側である「企業」
- 資金の供給者である「投資家」
企業側に圧倒的な情報優位性があります。
投資家が企業の情報を全て知ることができない環境であれば、
企業は、自社の価値をできる限り、時に実力以上に釣り上げようとするインセンティブが働く可能性があります。(逆に過度に保守的に見せようとする場合もあります。)
このような、企業と投資家との間に、情報の格差が存在すれば、市場全体が歪むことになります。
情報格差を解消するアナリスト
この情報の格差(非対称)を第3者の立場で解消する役割を果たしているのが、アナリストです。
健全なる資本市場の機能を果たす存在として、
企業からの情報を解析して、投資家の参考になる情報を提供することで、
情報の非対称を解消するという社会的な役割を担っています。
まとめると、
アナリストの社会的機能は、情報の非対称性の是正に貢献するとともに、客観的な立場から投資家の合理的意思決定に寄与することです。
強制情報開示制度も充実しつつある
今日では、強制情報開示制度などが充実化しており、企業には、最低限の市場に伝えるべき情報を発信する義務があります。
しかし、どんなに企業からの情報発信が充実したからといっても、
第3社の立場で、投資家の合理的な意思決定に貢献するアナリストの役割は変わらないと考えられます。
経済社会に重要な貢献
優れたアナリストの存在は、われわれの経済社会に重要な貢献をすることになる。アナリストの的確なる推奨により投資資金が社会の中で効率的に最も生産的な分野に配分されることになる。アナリストのアートが確かである限り、社会資本の消費は最小限に済むのである
ウイリアム・C・ノービイ